護摩の原語はサンスクリット語のホーマの音写である。
その根元をたどると古代インドのヴェーダの宗教にいたる。
バラモンの公的儀式で、毎日欠かさず行っていた、火の儀式を護摩と呼ぶ。
この護摩は、密教系の寺院においておこなわれる修法で、祭式の中心は火である。
壇上に規定の木(積木(しゃくぼく))を積んで燃やし、祭壇の炉中に供物の五穀、五香、投じ香油を注いで供養する。
火の神が、火と煙とにより、天界の諸尊(本尊)の口に届くことで目的が成就するものと考えられ、悪霊や不浄なものを焼き滅ぼし浄化し、障壁を取り除くための方便的、現世利益的な修法である。
護摩には、火の中を清浄の場として仏を観想する、護摩壇に火を点じ、火中に供物を投じ、ついで護摩木を投じて祈願する外護摩(げごま)と、自分自身を壇にみたて、仏の智恵の火で自分の心の中にある煩悩や業に火をつけ焼き払う内護摩がある。
修法には、目的別により、概(おおむ)ね、息災、敬愛、増益、降伏の四種の方法に識別がある。
息災護摩は、本尊を北に安置し、行者は南から北に向かって、円形の壇と炉(底に八幅輪を画く)もって所修する。
外的な障害や煩悩の除去など、自然災害、病気平癒などのマイナスパワーを取り除き、正常な状態にもどす、修法である。
敬愛護摩は、本尊を西方に祀(まつ)り、八葉形の炉(底に八葉蓮華を画く)を用いる、縁結び、良縁成就、夫婦和合などを目的に所修する。
増益護摩は、本尊を東方に、方形の炉(三鈷を画く)にて長寿延命、除災招福などの目的で所修する。
降伏護摩は、本尊を南方に、三角形の炉(底に独鈷を画く)にて、怨敵、魔障を除去する目的で所修する。
近年、道場の構造その他の事情により、本尊安置の方向を以って、本則による方位と思念し、壇は、殆んど木製の方形のものを常用し、護摩炉も常用のもので所修される。
※ 炎は不動明王の姿といわれています。